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東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)142号 判決

東京都西摩郡端穂町殿ケ谷九二五番地

原告

池和田治三郎

右訴訟代理人弁護士

榎本信行

東京都青梅市東青梅四丁目一三番地

被告

青梅税務署長

斉藤稔

右指定代理人

小川英長

高林進

田島好司

小沢那重

右当事者間の課税処分取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が昭和四二年一一月一三日付で原告の昭和四一年分の所得税についてした更正処分のうち税額八万五、八七〇円を超える部分および過少申告加算税、重加算税の各賦層決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、

原告は昭和四一年分の所得税につきその税額を八万五、八七〇円と確定申告したところ、被告は、昭和四二年一一月一三日付で税額を五五七万三、三七〇円と更正し、あわせて、過少申告加算税八万八、七〇〇円、重加算税一一一万三、九〇〇円の各賦課決定(右更正処分および各賦課決定をあわせて以下本件処分という。)をした。しかし、原告には同年分につき申告額以上の所得はなかつたのであるから、本件処分は、違法であるというべく、その取消しを求める。

なお、被告の本案前の坑弁を否認し、原告が本件処分に係る東京国税局長の審査裁決を現実に了知したのは、昭和四四年四月二〇日であるから、同年七月一四日に提起された本件訴えは、過法たるを失わない、と述べ、乙号各号証原本の存在およびその成立を認めた。

被告指定代理人は、主文と同旨の判決を、右申立が容れられないことを条件として、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、本案前の坑弁として、

東京国税局長は、本件処分に係る原告の審査請求を昭和四四年三月一七日付で、棄却する旨の裁決をなし、該裁決書の 本を同年四月二日書留郵便により原告あてに発送し、同書面は、翌三日原告に送達された。したがつて、本件訴えは、出訴期間徒過後に提起された不適法な訴えであつて、却下を免がれない、

と述べ、本案の答弁として、原告主張の請求原因事実は、すべてこれを認める(但し、確定申告による税額は、一一万四、七七〇円、更正による税額は、五六〇万二、二〇〇円である)、と述べ、乙第一号証の一、二の一、二、第二号証の一の一、二、二の一、二、三の一、二を提出した。

理由

原本の存在およびその成立に争いのない乙第一号証の一、二の一、二、第二号証の一の一、二の一、二、三の一、二によると、本件処分に係る東京国税局長の審査裁決書の謄本は、昭和四四年四月三日原告の住所に送達され、同日該裁決は、原告の知りうる状熊におかれたものと認めるに十分であり、行訴法一四条一項にいう「裁決があつたことを知つた日」とは、裁決が右のような状熊におかれた日をも含むのと解すべきである(最高昭二七・四・二五日判決、民集六・四・四六二参照)から、同年七月一四日にいたり提起されたこと記録上明らかな本件訴えは、出訴期間を徒過した不適法なものであり、却下を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡部吉隆 裁判官 中平健吉 裁判官 齋藤清實)

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